コブちゃんに声を掛けている二人組の年配の女性たちと出会った。コブちゃんの名前のようだったが、よく聞き取れなかったので尋ねてみた。
「なんて呼んだんですか」
「ピーちゃん」
「私たちはピーちゃんと呼んでるの」
当方が付けた名前は「コブちゃん」、安易な付け方だと言われてしまえばそれまでだが、いくら何でも大きな体の白鳥に「ピーちゃん」はないだろう、もちろんのそんなことは言わなかったが。
「ピーちゃんと呼ぶと、近寄ってくるのよ」
「利口よねェ、人間の言葉が分かるのかしら」
「ピーちゃん」
と呼ぶと、確かにコブちゃんが近づいて来た。
「『いっしょに向こうへ行こう』と言うとついてくるの、ホントよ。UターンするとピーちゃんもUターンするのよ」
「ピーちゃん、ついておいで」
と言って駆け足を始めると、ピーちゃん、いやコブちゃんが後を追って行くではないか。Uターンして戻ってくると、確かにコブちゃんもUターンして戻ってきた。