もう少なくとも5~6回はふくろうの雛を探しに行った。しかし毎回無駄足に終わっていた。今日もあまり期待はせずに行ってみたところ、すでに例の木に向かっていくつもの大砲が向けられていた。
ちょうどヒナが樹洞のとば口に出ていて、そこに西日が当たっていた。
昨日姿を現したヒナは、今日は姿が見えない。もう巣立ってしまったのか、それとも巣の中で過ごしているのか。昨日の様子では、まだ十分な飛翔力はないはずだから、それに親鳥の鳴き声が近くで聞こえるのだから、どこか遠くへ飛んで行ってしまったということはないのだろう。
「今朝、一羽下に落ちたらしい」
そんな声が聞こえてきた。もしそれが事実なら、すでに巣立ったヒナがいるということだ。一度巣立ってしまうと、二度と巣穴に戻ることはない、ということは聞いたことがある。そうだとしても、生育状態が悪くて、まだ巣立つことができないヒナが樹洞の中にいる可能性はある。もう少し待っていることにした。
誰かのケータイが鳴って、しばらくして三脚をかついだ人が急ぎ足でその場を離れていった。そして数人がゾロゾロとその人の後を追った。
「後をついて行った方がいいよ、ヒナが見つかったそうだから」
と親切なお年寄りが教えてくれた。
ヒナは思いがけない場所にいた。竹藪の奥に身を潜めていた。
ヒナがいた辺りには、「立ち入り禁止」のテープが張り巡らされていた。昨日、竹藪の中にいたヒナを撮影していたとき、警備員さんが見回りに来ていて、ガケに近づいている人もいたから危険と思って立ち入り禁止線を設けたのかもしれなかった。
昨日のヒナは、木の上ではなく地上にいた。
近くにいた人によると、親鳥がエサを運んできてくれて、それを食べている時に、エサとともに地面に落ちてしまった、ということのようだった。お尻だけが見えていたが、しばらくするとヤブの中に入ってしまって姿が見えなくなった。
この場所はヘビの縄張りらしくて、こんな注意書きも設置されている。ヘビの餌食にならなければよいのだが。
そのうちまたこの場所に姿を現すかもしれないと思って、ベンチに座って待っていると、男の人が近づいてきて、立ち入り禁止のテープを取り外し始めた。
「公園管理の方ですか」
と訊くと、
「いえいえ、ただの野鳥好きの人間です」
不審に思っていると、
「管理事務所に頼んで、このテープを借りてきたんです」
「ヒナを守るためだったんですね」
「ええ、人が多かったから。下の方でヒナが出ていますよ」
と教えてくれた。
例の樹洞では二羽目(たぶん)のヒナが姿を現した。ここ何年かは、毎年三羽のヒナが生まれているらしい。当方が確認できたのは、これで二羽目だが、それ以前に巣立ったヒナがいなければ、樹洞の中にはまだ一羽が残っているのだろうか。
親鳥をやっととらえることができた。
昨日は強風が一日中吹き荒れていた。樹上は大きく揺れて、ヒナはひとたまりもなく落下してしまうだろう。こんな日に、フクロウはどのように過ごすのだろう。そんな日に、ふくろうを見つけることはきっと難しいだろう、とは思ったものの、出かけてみたら案の定無駄足に終わった。
今日は風は収まったが、今にも雨が降り出しそうな曇り空、それでも、フクロウの親子はどうなったのだろう、と気になって出かけてみた。土日の人数とくらべれば雲泥の差で、カメラマンは一人だけだった。その人も、
「あの辺りを探してみれば、見つかりますよ」
そう言って去って行ってしまった。その場所は、先日親鳥が見つかった場所とは違っていた。
夜行性の鳥だから仕方のないことだが、ただひたすら眠り続けて、時おり目を開けて周囲を見回したり、毛繕いをしたりするだけだった。
ヒナは一羽だけ見つかった。親鳥の上の方に、こちらにお尻を向けたまま、やはり眠りこけているようで、体を動かすことはほとんどなかった。
親フクロウが毛づくろいをしている動画です。逆光になっているので見にくい面があります。(約50秒)
去年、アオバズクの写真を撮ったのは6月の初旬だった。今年もその姿を見られることを期待して、先週探しに行ってみたが無駄骨に終わってしまった。もう抱卵の時期に入ってるはずだから、例年通りなら、親鳥が巣の見張り番をしている様子を見ることができるのだけれど…今日、再び行ってみたが、探せど親鳥の姿を見つけることはできなかった。
今年はここには来ないのだろうか。かなり前のことになるが、何年間か営巣しないことがあったそうだ。ただ、こんな話もある。5月上旬に姿を見たという目撃談を、先週探しに来たときに長い望遠レンズを持った人から聞いたことがある。それが事実だとすると、一度偵察に来て今年はここで子育てをすることを断念したということだろうか。
見上げる角度をいろいろ変えてみたが、やはり見張り番の親鳥を見つけることはできなかった。今年はダメかなとあきらめて帰ろうとしたとき、こんな注意書きが目に入ってきた。
そこには「子育て中」とあるではないか。すぐには信じられなかった。この注意書きは、先週はなかったと思う。まだ真新しい感じなので、最近設置したのだろう。これで望みが出てきたということかもしれないが、ただ、自分の目で親鳥の姿を確認するまでは、心底信じる気持ちになれないのも、ほんとうのところなのだ。
今頃の時期には、母鳥が樹洞から出て、夫婦そろってヒナの巣立ちを見守っていた。その記憶を頼りに、またアオバズクが毎年来ていた大樹に行ってみた。
しかし結果は、前回と同じだった。草むらの中には、大砲を構えるカメラマンたちの足あとはなく、樹を見上げてもアオバズクの姿はなかった。
この何年もの間、いやもう十年以上になるかもしれない、毎年のようにアオバズクの姿を撮影してきたのに、今年はどうして来なかったのだろうか。カメラマンが増えすぎたせいだろうか。かなり前のことになるが、何年かの間ここに来ない時期もあったが、その後再びやってくるようになった…ということは聞いたことはある。またしばらく来ないのだろうか。