写真展「写真家ドアノー/音楽/パリ」のカタログは、まだ無名だった頃のジュリエット・グレコの写真が表紙となっている。パリのサンジェルマン=デ=プレで1947年に撮影されたというキャプションがついている。
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この写真一枚からいろいろなことが分かってくる。背景に写っている建造物は何か、場所がサンジェルマン=デ=プレであること、その形状から「サンジェルマン=デ=プレ教会」であることはちょっと調べればすぐ分かる。現存するパリ最古の教会である。
この写真は、どの角度から撮影したのだろうか。それを確認したくてGoogleマップで調べてみた。ドアノーが撮影した年からもう70年以上経っているが、日本のように地形を変えてしまうような大規模開発は行われていないはずから、ある程度の見当はつくはずである。
ストリートビューを使って、教会周辺を行ったり来たり、かなり歩き回った。足は疲れないが目が疲れた。そしてやっと見つけたのだ。
さらに場所を限定したくて、写真の下部に写っている長細い石状のものに注目した。これは何だろうか。
教会の尖塔の先端を入れるために、視点をイヌより下げて撮っている。そのような低い位置から撮るには、地面に伏せても難しいだろう。例えば、地下に続く階段に身を沈めて撮ったとは考えられないだろうか。その細長い石状のものは、階段の最上部の地上へと続く部分なのだ。
街中にある地下に続く階段…それは地下鉄の出入り口なのかもしれない。サンジェルマン=デ=プレ教会は、メトロ4号線「サンジェルマン=デ=プレ駅」の近くにある。駅ができたのは1910年のこと、ドアノーが撮影したのは、それから30年以上あとのことだった。
そこで再びストリートビューで教会周辺を歩き回った。地下鉄の出入り口は見つかったものの、そこからでは教会の見え方が違ってしまう。ストリートビューでは見えない場所にも、地下鉄出入り口があるのかもしれないが、残念ながらこれ以上バーチャル空間で調べるのは無理だった。
(続く)