新型コロナウィルスとワクチンについて(1)
新型コロナの感染症法上の位置付けが5類に変更になって、新規感染者数が毎日発表されることがなくなり、5月8日以降はそれまでの「全数把握」が「定点把握」による感染状況の発表になってしまった。「定点把握」による感染状況の発表では、流行状況がなかなかピンとくることはなく、感染者数は今何人ぐらいなのだろうかと時々気になることはあっても、次第に感染者数のことを気にとめないようになってしまっていた。そういう意識の変化は、多くの人についても同じようであったと言えるだろう。
【参考】
厚生労働省によると、変更のポイントは以下の通り。
(https://www.mhlw.go.jp/stf/corona5rui.html)
●政府として一律に日常における基本的感染対策を求めることはない。
●感染症法に基づく、新型コロナ陽性者及び濃厚接触者の外出自粛は求められなくなる。
●限られた医療機関でのみ受診可能であったのが、幅広い医療機関において受診可能になる。
●医療費等について、健康保険が適用され1割から3割は自己負担いただくことが基本となるが、一定期間は公費支援を継続する。
そんな状況下、5類移行後初めて迎えるお盆では、重しがとれたように多くの人が帰省・行楽などで移動したに違いない。実際NHKの分析では、感染拡大前の2019年に比べて106パーセントとなり、はじめて感染拡大前を上回ったということだ。
都道府県をまたぐ人の移動(2019年比)
5類移行で初のお盆 人の移動はどうなった? ビッグデータ解析
このように人の移動が増えれば、その結果は容易に想像できる。つまり新規感染者の増加である。
厚生労働省は8月25日、全国約5千の「定点把握」医療機関の報告を集計して、14~20日までの7日間の新型コロナ新規感染者数は、1医療機関当たり17.84人だったと発表した。人数は8万6756人で、前週より2万人近くの増加であった。
なお「全数把握」の集計結果が発表されていた5月8日は14,436人、5月9日が9,310人であった。
この増加は、お盆期間中の人の移動によるもので、一時的な増加と理解したいところだが、どうだろうか…21日から一週間の新規感染者数の発表が待たれる。
ところで2万人近くの増加ということだが、どういった変異型が主流となっているのだろうか。ともかく新型コロナウィルスは、短い期間で変異を繰り返しているから、余程こまめに関連の記事をチェックしていないと、手持ちの情報はすぐに古びてしまう。
たとえば米国での流行を例に取れば、
『4月22日の週現在、全米における発症数の9.6%をアークトゥルスが占め、73.6%を占めるオミクロン株(XBB.1.5)に次いで広まっている亜変異株となっているとCDCは報告している。』(Fobes
2023.04.28)
注:アークトゥルスとは、新型コロナウイルスの新たな変種であるXBB.1.16。
4月の時点ではオミクロン株(XBB.1.5)が発症数のほぼ4分の3だったが、その後、以下のように変異したそうだ。
『新たな変異株「EG.5」(通称エリス)が、米国で最も流行している変異株になった』
『米疾病対策センター(CDC)の最新の推計によると、7月23日~8月5日の2週間に、EG.5感染者は米国の新型コロナウイルス感染者全体の17.3%にのぼり、同じくオミクロン株から派生した「XBB.1.16」(通称アークトゥルス)を上回って主流になった。EG.5感染者の割合は4月30日~5月13日の期間には0.4%にとどまっており、ここ3カ月弱で急速に広がった。』(Fobes
2023.08.13)
米国 4月 ・・・・・・・・・→ 7月・8月
主流の変異株 XBB.1.5 XBB.1.16 EG.5(エリス)
【資料】
世界の新型コロナウイルス変異株流行状況(2023年8月23日)VUM:BA.2.86
この資料は、2023年7月5日から8月5日流行状況をまとめた表で、これを見ると全世界で主流となっている変異株は「EG5.1系統」であること分かる。日本は「XBB.1系統」で、近いうちに多分「EG5.1系統」に置き換わっていくと思われる。いや、すでに「XBB.1系統」が流行期に入っているのかもしれない。
厚生労働省の発表によれば、9月20日以降、生後6ヶ月以上の希望するすべての人を対象に、新型コロナワクチンの接種を開始するそうだ。対応する変異株は、上記の表にある通り「XBB.1.5」ということだ。ただ接種開始時期には、主流の変異株は「XBB.1系統」から「EG5.1系統」置き換わっている可能性が高い。接種するかどうかの判断をする場合は、そのことを頭に置いておくべきだろう。
令和5年秋開始接種 第1報(令和5年8月10日)
(つづく)