チョコが消えた(づづき)

22日の朝、また食べに来なかったらしい。前回のことがあったので、たいして心配することはなく、遅い朝食をすませてから、チョコの寝床をのぞきに行った。声を掛けると、ちょっと目を開けたがすぐに閉じてしまった。

 

しばらくしてから、朝食兼昼食を用意して、声を掛けると今度は起き上がってやって来た。右足を引きずるようにして歩いて来るのが、気がかりだった。エサに顔を近づけてみたものの、食べることなくその場に腰を下ろしてしまった。

 

抱き寄せて膝の上にのせてあげると、ノドをゴロゴロと鳴らし始めた。ノドを鳴らすことはそれほど珍しいことではないが、その時は今までにない鳴らし方だった。体全体を共鳴させて、その振動が膝に伝わってくるほどの激しい響き方だった。引きずっていた右足が気になったので触ってみると、激しい怒りの表情でそれを拒んだ。

 

ひとしきり膝の上で過ごしてから、道路に面したところまで、やはり右足を引きずるようにして歩いて行った。眼で追っていると、立ち止まって振り向いて、自分からしばらくこちらと視線を合わせていた。普段は眼の状態を見ようとして、顔を無理矢理こちら側に向けようとしても、頑として拒むことが多かったので、疑問と共にちょっと戸惑いを覚えた。今思えば、それは末期の眼だったのかもしれない。

 

 

 

 

家の前の道路に面したそこがお気に入りの場所で、飽きもせず眺めていることがよくあった。その日も、そこでしばらく過ごしていた。そして、こちらが家の中で戻ったあと、いつの間にか姿を消していた。そして夕食時になっても、姿を現すことはなかった。

 

夜、夜食をあげる時間に庭に出てみると、あのチョコのお気に入りの場所に、猫の影が見えた。一瞬、チョコが戻ってきたのかと思った。近寄って確かめてみるとコロンだった。こちらが近づいても逃げることなく、悠然とその場所に座り続けていた。

 

庭のイチハツは盛りを過ぎて、季節は移り変わろうとしている。

 

 

2023年04月24日